猫は逃げてしまう

起きたら、昼過ぎだった
授業に間に合わないどころか、今日友達来るのに、
全く掃除が終わってなくてどうしようと焦った
知り合いに手紙も急いで出さなきゃいけなくて、
やることいっぱい過ぎて、頭が混乱したまま、
朝ご飯(既に昼ご飯)作りと掃除を同時進行でする。
ギリギリまで洗濯物をたたんで、
せめて1時間だけでも出ようと学校に行った。
学校の友達と擦れ違ってしまって、少し淋しかった。


家に帰って、掃除をようやく終わらせて、
随分すっきりした部屋を後に、郵便局へ向かう。
ようやく溜めてたお返事を出せたので、一安心。
地元の友達が駅に着くまで、家に戻って皿を洗う。
…本当に改めて思うと、凄く汚かった、この部屋。
いいきっかけを貰ったなぁ(苦笑)


6時ごろ、迎えに行く。
地元の友達と逢うのは、実はそんなにしばらくぶりでもないんだけど。
10日に郡山に、アートのライブを見に行ったとき、逢ったから。
その子は夏頃、家出したときに家に1週間位いたから、
第三のふるさと!(第二は会津らしいです 笑)とか言ってた。
付き合い始めたばかりの彼氏に逢いに来て、
彼の仕事が終わるまで家で遊んでいくということだった。


まぁいいよ、一人よりは楽しかったさ。
夕飯奢って貰えたし。(マックでセット400円)
夜7時からのアニメも久しぶりに見たし。
ドラマなんかも本当に久しぶりに見たし。
煙草も久しぶりに吸ったし。
やる気がないから、こういう機会がないと何もする気ない人なんだよね、私。
だめだね。


10時頃、彼氏からメールが来て、送っていくことになった。
ホットの缶紅茶を奢って貰って、別れる。
その子は夏に家出したとき、前の彼氏と同棲するつもりで関東に来たんだけど、
先月頃に、浮気されてたのがわかって、別れたらしい。
今度の人は嘘吐かないんだって言ってたけど。
何にせよ、幸せになればいい。
誰かが不幸になるのを見るよりは、よっぽど胸がすっきりすると思うので。
そしてついでにまた遊びにくればいいさ。


アートを聴きながら、自転車で家に帰る。
買って貰った缶紅茶を握ると、掌はあったまるのに、
手の甲まではあっためてくれない。
握ったまま鼻をすすったら、そんなことに気付いた。
些細なことだけど、面白かった。


自転車を止めたら、猫の声が聴こえた。
昨日も夜中に外に出たら、その仔はいた。
その前の日もだ。
とても小さな仔猫。
鳴き声はか細かった。


興味は津々だったけど、普通に近付いたら当然逃げられるので、
私は煙草を吸いながら、猫が寄って来てくれるのを待ってみた。
空を見ながら、あぁ星が細々見えるなぁと思いながら、
寒いなぁって思いながら、擦れ違う人たちを横目に見ながら、
煙草の煙が空に立ち昇るのを見ながら、
それで視界に映る夜空が白く煙って行くのを見ながら、
細い白い蜘蛛の糸のように絡まり合いながら昇っていく煙を見つめながら、
先端から立ち昇る細い真っ白なそれが綺麗だと思いながら、
いつまでもいつまでも待っていた。


煙草はどんどん本数が重なった。
ただただ寒くて、でも帰れなくて、煙草ばっかり銜えて、
最終的には苦くて仕方ないだけになってしまって、
でも煙草が短くなる度、火だけは点けてしまって、
結局買ったばかりのそれを、ほとんど吸わずに全部空にしてしまった。
猫は、出て来なかった。
いつまでもいつまでも待っていても、
猫は、出て来てくれなかった。


あの仔は自動販売機の下に篭ったまま、
私に寄り添ってはくれなかった。
人間と猫、違うモノ、違うモノ。
あの仔はこの煙が身体に悪いって、わかってるのかもしれない。
私はこの煙が身体に悪いって、わかっていながら吸い続けた。
途中で煙くて苦くて、やめてもなお火を点けてしまった。
無駄。
馬鹿。
私はあの仔よりもずっと間抜けなのかもしれないと思った。


煙が目に染みて、涙が出た。
ようやく最後の煙草が短くなったとき、
私はそれを消して、家にゆっくり戻った。
何だかとても寒くて、手が痛い。
何だか口の中がひたすら苦くて、気持ち悪い。
何だか私はとても悲しくなって、本当に泣きたくなってしまった。


自動販売機の周りには、沢山の灰がばら撒かれていた。
あの仔の住処を汚してしまって、本当に申し訳ないと、心から、思った。



随分詩的になってしまったけど、ほぼ事実です。
私はそんな寒い人間です。
ノスタルジック塗れ。