銀河鉄道の夜 /ますむらひろし


銀河鉄道の夜 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)

銀河鉄道の夜 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)


宮沢賢治の物語をますむらひろしが漫画化。


本作の解説を読んで知ったのだけど、この銀河鉄道の夜は第一稿から三度の手入れ・改稿がされていて、一般的に良く知られているのが第四次稿らしいです。この文庫にはその一般的に知られている銀河鉄道の夜と、初期の銀河鉄道の夜との両方が漫画化されていて、重複した表現も違う解釈によって表現されていたりして飽きさせません。初期稿と最終稿、両方読むことで原作者の意図や物語の流れ、また登場人物の心情の理解の幅が広がります。


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「おっかさんはぼくをゆるして下さるだろうか。」


ああ そうだ。
ぼくのおっかさんはあの遠い一つのちりのように見える橙いろの三角標のあたりにいらっしゃっていまぼくのことを考えているんだった。


「ぼくはおっかさんがほんとうに幸いになるならどんなことでもする。けれどいったいどんなことがおっかさんのいちばんの幸いなんだろう。」
「きみのおっかさんはなんにもひどいことないじゃないの。」
「ぼくわからない。けれども誰だってほんとうにいいことをしたらいちばん幸いなんだねぇ。だからおっかさんはぼくをゆるして下さると思う。」



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(本作中45〜46P、七、北十時とプリオシン海岸 より)



宮沢賢治の原作を読んだのは小学校高学年〜中学校の間だったような気がするけど、未だに読み返しても何故か記憶に残っている部分。
ラストに登場するカムパネルラの父親の台詞もたった一言なのに、深い。