毒されている、と思う。


日常に帰る。
母と会話を交わし、親戚の幼子とアンパンマンで遊び、近所のおばさまと世間話をして、友人の優しいメールに返信をし、電車に乗り、学校へ向かう。


感覚が麻痺している。いや、やっぱり毒されている。
毒されているというのがすごくしっくりくる。
私は、毒を以て毒を制することができない。できていない。
いつも通りな顔をして、腹に取り込んだ毒をバラまいている気がしてならない。



そしてゾッとする。
日常に戻ったつもりで毒を撒いているかもしれないことではなく。
何故なら今、私が孕んでいる毒気こそ、数年前は私の日常的感覚だったはず。
この、ぼんやりと視界が滲み、前頭葉が繭を被ったままやたらと冴え渡る、そんな感覚を、私は覚えている。
ゾッとする。
毒されているのだ。
例え正常がどちらに在っても。


けど、毎日は変わりなく、巡る。
私は運ばれる。
鼓動にも似た電車の揺れの中で、唇にそっと封をする。
毒気とともに、少し、眠る。