逐語録 その2


「ねぇお父さん、どうして僕はこんなに悲しいんだろうね」
「さぁなぁ」
「僕にはわからないんだよ、どうして僕はこんなに些細なことで傷付いてボロボロになってしまうのか、どうして他の人みたいに痛みに眼を瞑って上手に生きて行かれないのかが。僕はそんな自分が嫌なんだ。本当に大嫌いなんだよ。」


「そうか、でもなぁ」
「なに、父さん」
「そう言うお前の横顔、いかにも“そんな自分から離れられないんです”って顔してるぞ。」
「あら、ほんとう?」
「憂鬱の中には中毒性を孕んでいるものもあるから、気を付けるんだよ。」
「そっか、でもそんなら、もう遅いよなぁ。」
「そうだなぁ。」