電車の中の描写?


電車の座席に凭れながらまるで夢うつつに窓ガラスを見やっている。
電車のドアの窓ガラスに、反対側のドアの窓からの景色がまるで陽炎のようにぼんやり浮かび流れていく。
空だ。白い雲が凛と澄み渡った冬の青空に浮かび、それは幼い頃に飲んだソーダフロートを思い出させた。
僕が見ているのは、向こう側に移る枯れ草が立ち並ぶ土手や石壁ではなく、実際に眼に映る景色が平淡で寂しくなればなるほどに際立つ、僕からは決して直接に見えてはいない憧憬だ。
景色は流れ、雲は甘く優しく、白く浮かぶ。僕は微睡みの中へ意識を投じた。