透き通る水色の空の縁、山の端には淡い桃色の雲が穏やかにずっしりとした重量を想わせながら(あくまでも実在はしないそれを想わせた)そこに留まっていた。
送電塔は何故あんなにも凛々しく立っていられるのだろう。ぴっと背筋と両腕を伸ばして、淡い空色を背景に私たちを見下ろしている。その両腕は電線に繋がれているが、まるで不自由さを思わせない。ただ雄大に立ち尽くしている。
あのフォルムがとにかく美しいのだ。全身を構成する幾何学的な模様と、突然広々とした平地の真ん中に現れた塔に、以前美術館で見たナスカの地上絵を思い出した。全く連想的に、根拠はなく、直感的に。


迫る夜の闇から私たちを守ると言わんばかり、その両腕は明るくあたたかい灯りを運ぶ。私は小さく頭を垂れた後、再び自転車を漕ぎ出す。