People In The Box『Family Record』 release tour@中野サンプラザ

BadCat1282011-04-20



ポエトリー(郡山と同じく、嵐に洗い流されるように打ちつけられた"私たち"の詩)が流れ出し、段々会場が暗くなった。
幕は降りたままステージライトが灯り、長細い手足の大きな影が、マイクの前まで歩み出るのが浮かび上がる。まるで旧市街のMVに登場する少年の姿そのままだった。
3つの影がその実体を現さないままに、音は鳴り出した。


東京
アメリ
ベルリン
レテビーチ
新市街
泥の中の生活
火曜日/空室
ストックホルム
(MC)
マルタ
どこでもないところ
リマ
犬猫芝居
月曜日/無菌室
(MC)
天使の胃袋
はじまりの国
旧市街
JFK空港


(EN.1)
新曲(明日への手紙)
She Hates December
スルツェイ


(EN.2)
(ツアースタッフ、メンバー紹介)
ヨーロッパ



JFK空港がとても素晴らしかったです。ポエトリー部分が途切れてしまい、歌えないまま終わってしまうのかと思ったのですが、しばらくの間奏の後、波多野氏はギターをぐるっと背中側に回し、まるで意を決したようにマイクを掴みました。そしてまっすぐ前を見て叩きつけるように残りのポエトリー部分を紡ぎ出していました。何かハッとさせられるようで、思わずボロボロ涙が零れました。
ポエトリーが途切れてもまた再開されても、ダイゴさんのドラムと健太さんのベースは揺るぎなく場を包み、それか何ともあたたかで居心地よく感じられました。JFK空港の持つ壮大さが音源以上の状態奏でられ、また彼らの生々しいまでの演奏は深く突き刺さるものがありました。


JFK空港、というか全体を通して照明も大変良かったです。ライトによって真っ赤に染め上げられた幕はまるでオペラの会場を思わせました。その中でイントロのギター、波多野氏の歌い出しを耳にし目にした瞬間、何故かその時点でもう涙が出ました…自分でもはっきりわかりませんが、とにかくその赤い垂れ幕は美しかったのです。
それとベルリンのレッドライトグリーンライトの演出はライブでこそだと思いました。ベースとギターがカーチェイスのように追いかけ追い抜きせめぎ合う様と、グリーンとレッドのライトが降り注ぐ様は絶妙に噛み合っていました。


波多野氏は喉の調子が絶好調でしたね。声はのびのびと力強く響き、また高音が大変綺麗に出ていたので痛く感激しました。いつも以上に大きな声で楽しげに歌い演奏しているのがとても印象的でした。


MCではいつも以上にたくさん喋ってくれました。ダイゴさん以外の二人があんなに喋ってたのは多分初めて見ました。確か一回目のアンコールで写真撮影もあったと思います。
またスタッフ紹介で波多野氏が沢山の方に感謝を伝え、メンバー紹介では「個人的に、素晴らしいメンバーの二人にも感謝」と言った後、健太さんが波多野氏を紹介というやり取りも。
今回公演が延期となり、そういったスケジュール面の調整はもちろん、先程述べたように素晴らしい照明の演出やPAの方、その他沢山のスタッフの努力があってこそ、今日私たちは彼らの演奏にこうして心震わすことができたのだと思います。演奏を届けてくれたメンバーももちろんですが、本当ににいろんな方の努力に感謝したいです。


JFK空港から涙腺が緩みっぱなしでした。アンコールの新曲、スルツェイやヨーロッパはもちろん、アンコール2での今回の震災を受けての波多野氏の心情にも泣きました。暫定的に正しい/正しくないの判断に対する確信はどうしてこんなにも揺るがされ失われたのか、聞きながら不思議で悔しくて仕方なかったのですが、「トライアンドエラー」と言った彼の言葉を聞いて、ああそうやってくしかないし、今まさに私はそれを暫定的に正しいと思ったから、何とかやれるような気もしたりしました。



後ろ髪を引かれるように会場を後にし、時間もあったので先ほどまで中野の街をうろつきました。中野にくる前に立ち寄った新宿が嘘のように居心地がよくて、夜がほんのり静かに寄り添ってくれるような感覚に陥りました。意気揚々と闊歩しながら、明日からのまた忙しい毎日を何とか走り抜けるようなそんな気がしてしまうのでした。